INTERVIEW

医療機器分野で新しい挑戦を志す人にとって、このプログラムはどのような学びの場となるのか。起業を目指す方、中小企業からの参加者、スタートアップからの参加者――それぞれ異なる立場でMIDを受講した3名にお話を伺いました。

起業準備中での参加者

自ら動くことで学びが深まり、ネットワークが広がるプログラム――

武田康宏 氏

株式会社Neuspective代表取締役CEO 武田康宏 氏

【経歴】
株式会社三菱総合研究所でコンサルタント、その後、東京大学松尾・岩澤研究室の学術専門職員として、講義、インキュベーション、国際関係担当を経験。特に、東京大学発のディープテック起業特化講義やVCとのアントレプレナーシップ講義の設立、各種起業コミュ二ティ創設に関わる。また、複数の医療系プロジェクトにも参画。2024年、学生時代に経験した脳腫瘍の主治医でもある村垣教授とともに、医療分野でAIによる新たな課題解決を図るため、株式会社Neuspectiveを創業。

Q. 受講を決めるに至った経緯を教えてください。
大学でディープテックに関する授業の立ち上げやカリキュラム運営を手がけてきたなかでバイオデザインというものを知り、調べるうちに本プログラムに出会いました。 受講当時、放射線科読影や手術周辺のプロダクト開発を考えていた背景から、一般的な起業論ではなく、「医療機器開発」にフォーカスしており、どこからが医療機器となるのかも知ることができる、本プログラムを学んでみようと考えたからです。
Q. 多くのプログラムがある中で、MIDを選んだのはなぜですか。
受講が長期間となるスタンフォード大学や日本バイオデザイン学会が展開するバイオデザインプログラムに比べて、短期間でしっかりと学べそうな本プログラムに魅力を感じました。
また、バイオデザイン関係者や、受講者同士のネットワーク形成にも大きな期待感があったため、MIDを選びました。
Q. 受講してみて役立ったと感じた内容はどのようなことですか。
受講してまず強く感じたのは、「とにかくニーズドリブンであること」の大切さです。病態理解を出発点に、既存の治療法や関わるステークホルダー、市場や患者規模といった要素を整理し、絞り込んでいく手法は非常に明確で、実務にそのまま活かせるものでした。
薬事の基礎知識については、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)元職員である冨岡穣氏による講義が特に印象に残っています。
さらに、医療現場観察実習では「とにかく観察する」という姿勢に加え、現場で医療従事者と直接コミュニケーションを取れたことが大きな学びとなりまた。
そして、受講生や講師陣とのネットワークを築けたことも大きな財産だと感じています。
Q. これから受講する方へのアドバイスはありますか。
医療機器を対象とした社会実装や起業論をコンパクトに学ぶには非常に有意義なプログラムだと思います。講義に加えて現場観察もあり、講師陣も充実していて、バイオデザイン本家と遜色ない内容ではないかと感じました。講義資料も修了後に参照でき、今でも活用しています。
受講はチームに分かれて進めます。私の場合は、幸いにも医療従事者がチーム内にいたため理解が深まりましたが、もし医療従事者がいなかった場合には、医療用語や現場感覚で戸惑うこともあるかもしれません。その際は、積極的に質問したり、自ら調べたりして動く姿勢が重要だと思いました。医療従事者ではない方であれば、尚、現場に行く・聞きに行く「足」が重要だと思います。
Q. 最後に、これから受講する方へのメッセージをお願いします。
起業を目指す立場で臨む方もいれば、企業から派遣される形で受講する方もいるなど、参加者の背景やマインドはさまざまだと思います。ただ、いずれの場合も受け身にならず、この機会を通じて自分は何を得たいのかを意識して臨むことが大切だと思います。
医療機器分野での挑戦を志す方に、ぜひおすすめしたいプログラムです。
スタートアップ企業からの参加者

医療機器開発の基礎を体系的に学び、仲間を得られるプログラム――

波多野薫 氏

株式会社カルディオインテリジェンス波多野 薫 氏

【経歴】
株式会社カルディオインテリジェンス R&D室所属。新規事業開発・研究開発・全社知財を担当。同社は2019年創業の大学発ベンチャーで、世界中の医療過疎地域で多様な心臓病を早期発見できるよう長時間心電図用の革新的なAIプログラム医療機器の開発・事業化に取り組んでいる。

Q. 受講を決めるに至った経緯を教えてください。
現在所属している医療機器のスタートアップ企業を共同創業した後、様々な場所で「バイオデザイン」という言葉を耳にして興味を持っていました。そんな中、ジャパンバイオデザイン設立者の前田祐二郎氏がSNSでMIDの募集について発信されているのを見て、本プログラムの存在を知りました。
当社の主事業はプログラム医療機器の研究・開発です。私自身はマネタイズのために新たな事業の柱を作る必要性から製薬企業向けの非医療機器を扱う事業を担当しているのですが、プログラム医療機器を開発・展開する企業の新規事業開発の担当者として、業界の基礎知識としてバイオデザインを理解する必要があると考え、受講を決めました。
Q. 多くのプログラムがある中で、MIDを選んだのはなぜですか。
これまで様々な医療機器開発プログラムや、薬事・保険収載等の講座にも参加してきましたが、MIDはデザイン思考をベースにしている点が特徴的だと感じました。
多くの助成事業(アクセラレーションプログラム)は、既に事業計画が整っていることを前提に、その実現を支援する仕組みです。一方でMIDは、その前段階にあたる「バイオデザイン」という医療機器業界の標準的なフレームワークを使い、事業計画に至る前にフレーム自体の妥当性を検証できる点に大きな意義があります。その点で、従来のプログラムとは立ち位置も使い方もまったく異なるものだと考え、選びました。
Q. 受講してみて役立ったと感じた内容はどのようなことですか。
多くのニーズステートメントを作り、スクリーニングや言語化を通じて整理していくプロセスが役立ちました。ステップが明確になっている点も良かったです。
また、WHO等で保険償還の専門家として活躍されている福田恵子氏による「薬事の観点における〇×の付け方」の講義は、5年間この仕事をしてきた中で「もっと早く知りたかった」と思うほど実用的で印象に残っています。
さらに、医療現場に実際に入って現場観察をさせて頂き、医療従事者の話を直接お伺いできる点も他のプログラムとの大きな違いだと感じました。
Q. 受講時のチーム内での役割や、メンタリングはいかがでしたか。
受講時はチームにてケースワークを進めていくのですが、私のチームには医師や事業計画、マネジメントに強いメンバーがいたので、それぞれの得意分野を活かし、私は知財と薬事を担当しました。チームビルディングに意識が高いメンバーが揃っていたこともあり、役割分担はうまく機能していたと思います。
私たちのチームでは、当初はアイデア出しの際の楽しさを重視して、発散的に進めようとしていました。しかし、全8回という本来のバイオデザインよりも、かなり短い時間で結論を出す必要があっため、メンターの方々から進め方について助言をいただき、途中で議論を収束させる方針に方向転換を行いました。おかげで、プログラムを円滑に進めることができ、プロセス全体を体験・理解することができました。メンターの方々が、私たちがバイオデザインの全体像を理解できるように気を配ってくださっていることに感謝しています。
また、資料や講義だけでは理解しきれない部分もありましたが、メンターの方々が丁寧に疑問に答えてくださり、悩みを解消しながら理解を深めることができました。
Q. これから受講する方へのアドバイスはありますか。
 現場観察では専門用語が飛び交うため、その場で深いニーズを引き出すには質問や理解するための準備が必要です。医師から「ある程度理解している」と思ってもらえるレベルの基礎的な医療知識は、事前に身につけておいた方が良いと感じました。
また、チームの雰囲気も受講中の学びの質と受講後の人脈形成に大きく影響します。チームの雰囲気をよくするためには、全員が役割を持ち、お互いの貢献に感謝しながら、学ぶ環境をつくることが重要だと思います。受講期間中に、お互いの人となりや得意なことを知り、サポートし合いながらワークを進めていくことで、医療機器業界で困ったときに助け合える仲間が得られると思います。
Q. 最後に、これから受講する方へのメッセージをお願いします。
まだ事業として立ち上がっていない段階で参加する場合は、このプログラムを通じて自分のシーズに事業性があるかを確認することができます。すでに別のフェーズにある方でも、不足している部分を見直すきっかけになるはずです。
スタートアップ企業の場合は、社内に知識が十分でないメンバーが集まっていることも多いため、学んだ内容を社内で共有することで、組織全体の底上げにも繋がると思います。
医療機器分野での挑戦を考えている方には、ぜひ受講をおすすめしたいプログラムです。
中小企業からの参加者

学んだ内容をすぐに現場で活かせる実践的なプログラム――

波多野薫 氏

アルケア株式会社赤岩 裕士 氏

【経歴】
アルケア株式会社 商品開発部ウンド&ナーシングケアグループ所属。クッション付き末梢静脈カテーテル固定専用キット、透湿・防水性フィルムロール、粘着剥離剤などの開発に従事。

Q. 受講を決めるに至った経緯を教えてください。
過去に社内でバイオデザインの研修を受ける機会があり、その流れを汲んだ製品開発に取り組んでいました。しかし、ニーズステートメントと解決手段の設定において、どのように競合製品と差別化を図り、イノベーティブなアプローチをするかという点に課題を感じていました。
そのような状況のなか、開発部の部長から本プログラムを勧められ、日程的にも調整が可能だったことから、上長の推薦を受けて受講を決めました。
Q. 多くのプログラムがある中で、MIDを選んだのはなぜですか。
社内に現場観察を行う提携病院はあるものの、他の研修では限られた時間の中で現場観察のプログラムはありませんでした。しかし、本プログラムでは、医療現場を実際に訪れ、医療従事者から直接お話を聞けるということで、その点に魅力を感じたためMIDを選びました。
Q. 受講してみて役立ったと感じた内容はどのようなことですか。
ニーズステートメントを作成する際に現場観察ができたことです。医療従事者と直接会話したり、器具や処置に触れたり、質疑応答を重ねたりしたことで、より具体的で実感のあるニーズをとらえることができました。
講義では明確なフレームワークに沿って学ぶことができ、フレームを埋めていく作業を通じてバイオデザインの流れを実際に体験できた点も大きな学びでした。さらに、ターゲットの明確化や価値を定量化する重要性を理解し、コンセプトの作り方を学んだことで、以前より多くのアイデアを生み出せるようになったと感じています。
加えて、受講期間中に毎月課題があったことで、日常業務を行いながらも常にバイオデザインを意識する習慣が身についたことも、大きな収穫でした。
Q. 受講時のチーム内での役割や、メンタリングはいかがでしたか。
チームでの資料作成では、私はギャップ分析を担当し、ポジションの有無を調査しました。他のメンバーもコンセプト作成やニーズステートメントの提案を担い、それぞれが役割を持ってうまく分担しながら進めることができました。
課題を進める中では、自分や自社では思いつかなかった発言やアイデアを出してくれるメンバーもいて、それが解決策につながったことも印象に残っています。
また、担当メンターだけでなく、他の先生方からも的確なアドバイスをいただけたおかげで課題をスムーズに進められました。専門性の高い内容も安心して質問できる環境が整っていた点は非常に良かったです。
Q. 受講後、ご自身のなかでの変化を実感する場面はありますか。
受講中にちょうど社内でニーズ発掘からニーズステートメントの作成、解決策の導出までを行うチーム活動があり、その際にはバイオデザインのプロセスを進める旗振り役として貢献することができました。
修了後も社内で、バイオデザイン的な視点から指摘や指導ができるようになり、学びを活かせていると感じています。
Q. これから受講する方へのアドバイスはありますか。
医師や臨床現場の方とコミュニケーションを取る際は、基本的な知識を事前に調べておくことが大切です。ただし、単に調べるだけでなく、「なぜそれを調べるのか」を意識することが重要だと思います。
どんなに初歩的に見える質問になってしまったとしても、相手からきちんと聞き出すことが重要です。そうしないと、根本的な理由に配慮できていない解決策になってしまう恐れがあるので、先入観を持たずにヒアリングする姿勢を意識すると良いと思います。
Q. 最後に、これから受講する方へのメッセージをお願いします。
バイオデザインのプロセスはフレームをひとつひとつ埋めながら進んでいきます。そのフレームを埋めるために意識すべき点は多くありますが、一度フレームを知り、実際に経験することで「自分のもの」にできます。ぜひ受講し、体験してみてください。

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